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髙松雅子が「現代の名工」に選出。花びらから一輪を仕立てるMASAKO MODESTEの技

名古屋のフラワーデザイナー・髙松雅子が令和8年度「現代の名工」に選出。バラの花びら5枚で椿をつくる工程、ブートニアから生まれた技法、失敗例を比べる指導、家庭で長く飾る工夫を運営会社に取材しました。

髙松雅子が「現代の名工」に選出。花びらから一輪を仕立てるMASAKO MODESTEの技
2025年の個展会場に立つ髙松雅子さんと展示作品。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

編集責任者 AKIMOTO

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バラの花びらをいったん外し、重ね直して、椿の姿をつくる。名古屋発のフラワーデザイナーブランド「MASAKO MODESTE(マサコモデスト)」の代表デザイナー・髙松雅子さんが、令和8年度の「現代の名工」に選ばれました。花の仕事に50年以上携わる髙松さんの技は、どのように生まれ、次の世代へ伝えられているのでしょうか。ブランドを運営する株式会社EMOTION RHYTHMの代表取締役・山口智大さんに、制作の具体的な工程と、家庭で花を長く楽しむための工夫を聞きました。

「現代の名工」に選出。花材の組み合わせから、一輪の形まで

厚生労働省の11月6日の発表では、令和8年度の卓越した技能者として141人を決定。被表彰者名簿には、髙松雅子さんがフラワーデザイナーとして記載されています。表彰式は11月9日に予定されています。「現代の名工」は、優れた技能を次の世代へつなぐことなどを目的に、現役の技能者を表彰する制度です。

同社の発表によると、髙松さんは20代から十数年間、年に1〜2回ドイツへ渡って学びました。ドイツのフローリスト理論を土台に、日本の美意識と制作現場の経験を重ね、作品全体の構成と、一輪そのものの表情の両方を整えてきました。

花と枝の向き、作品全体の表情を整える髙松さん。
花と枝の向き、作品全体の表情を整える髙松さん。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

1995年にはフラワーデザインのコンクールで労働大臣賞を受賞し、2022年には「あいちの名工」に選ばれています。現在も制作と指導を続けており、その歩みはブランドの受賞紹介ページでも紹介されています。

個展開催時の髙松雅子さん。
個展開催時の髙松雅子さん。(画像提供/株式会社EMOTION RHYTHM)

出発点は、胸元の花を「開いた姿」にしたかったこと

山口さんによると、髙松さんがプリザーブドフラワーに取り組み始めたのは約30年前。花びらを組み直す技法のきっかけは、胸元に着ける花飾り「ブートニア」の制作でした。当時手に入る花材は、まだつぼみに近い形だったそうです。

花びらを一枚ずつ外し、組み直す準備。
花びらを一枚ずつ外し、組み直す準備。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

そこで、花が開いた姿に仕上げたいと考え、花びらを一枚ずつ外して、開花した形に組み直す方法を思いつきました。髙松さん自身は同じ方法で制作する人を知らず、自分で考えて取り組んだ挑戦だったといいます。

花びらの角度と重なりを調整する手元。
花びらの角度と重なりを調整する手元。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

花びらの角度や重なりを変えると、同じ花材でも開き方や量感を調整できます。同社のリリース写真には、花びらを外す準備から、重ねる作業、仕上がった一輪までが写っています。

組み直して開き方と量感を整えたバラ。椿の完成写真ではありません。
組み直して開き方と量感を整えたバラ。椿の完成写真ではありません。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

山口さんは、この経験がプリザーブドフラワーで表現できる幅を広げたと説明します。その後も制作と研究を重ね、髙松さんはJPAを設立。現在も代表理事として活動しています。

バラの外側の5枚が、一重の椿になる

別の花の姿をつくる例が、一重の椿です。髙松さんは約25年前から、バラの花びらで椿を表現してきたといいます。大切にしているのは、花の名前を聞いたときに、多くの人が思い浮かべる色や形を表すことです。

使うのは、プリザーブドのバラの一番外側から外した5枚。山口さんによると、バラの外側の花びらは内側に比べて乾燥しやすく、少し硬めになります。その特徴を、花びらが大きく少し硬さのある椿の表現に生かしています。

  1. まず3枚を内側に組み、1枚目と3枚目の間を少し空けます。
  2. 残る2枚を、空けた隙間と反対側の隙間に、それぞれ外側から重ねます。
  3. 隙間をふさぐ位置を目安に形を決め、花びらの根元を接着剤で固定します。

花の種類によっては花びら一枚ずつにワイヤーをかけますが、この一重の椿では花びらにワイヤーを使いません。特徴的な花芯は、ワイヤーやドライにしたミモザ、フローラルテープなどで表現。仕上げに作品に合う茎の長さを決め、葉にはアーティフィシャルフラワー、つまり造花を用います。

こうした判断の土台には、花材そのものを研究した経験があります。かつて会社の近くに借りた施設を製造工場として使い、生花からプリザーブドフラワーをつくりながら、さまざまな花の性質や特徴を調べていたそうです。その蓄積を、プリザーブド加工に向かない花を別の花の花びらで表す制作にも生かしています。

教えるときは、失敗例とお手本を並べる

形を決める感覚を、初めて学ぶ人へどう伝えるのか。髙松さんの指導では、まず失敗例を見てもらいます。椿なら、花びらの重ね方を変えたものとお手本を並べ、どこが違い、なぜお手本のほうがきれいに見えるのかを説明するそうです。

一重の椿の表現を生徒に伝える髙松雅子さん。
一重の椿の表現を生徒に伝える髙松雅子さん。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

花びらにワイヤーを使う花では、ワイヤーの選び方や刺す位置を変えた例も比較します。仕上がりの違いだけでなく、違いが生まれる理由まで、実物を見ながら学ぶ方法です。

現在は自身の教室2校で指導し、これまで中日文化センターや専門学校などでも講師を務めてきました。山口さんによると、髙松さんはその経験から、失敗例とお手本を見比べて、うまく仕上がる理由を伝えることが、初学者には最も理解しやすいと考えています。

家で楽しむなら、水を与えず、風と光の当たり方に気をつける

プリザーブドフラワーを飾る場所について、山口さんが伝える基本は、高温多湿を避け、風通しがよく、直射日光やエアコンの風が直接当たらない場所を選ぶこと。水やりや霧吹きはしません。ほこりは柔らかい筆や刷毛でそっと払い、繊細な花びらを強くこすらないようにします。

同じプリザーブドフラワーでも、色によって持ちに差が出ることがあるそうです。髙松さんは約30年の経験と知識をもとに、花材を選ぶ段階から長く楽しめるよう工夫を重ねています。山口さんによると、20年前に制作して今も当時の形を保つ作品もあります。これは髙松さんの作品についての経験で、すべての花材や置き場所で同じ期間を保つことを示すものではありません。

今回提供された画像には、約20年前に制作したブーケを、飾り続けられる作品へ仕立て直したものも。花を贈るときや迎えるときには、飾る場所と日々の扱いも一緒に考える手がかりになります。

約20年前に制作したブーケを、長く飾れる作品へ仕立て直したもの(同社説明)。
約20年前に制作したブーケを、長く飾れる作品へ仕立て直したもの(同社説明)。(画像提供/株式会社EMOTION RHYTHM)

学び続けた人が、花の仕事を続けられる場へ

MASAKO MODESTEは、プリザーブドフラワーやアーティフィシャルフラワーの作品販売に加え、法人向けレンタルやウェディング、供養花を手がけるブランドです。作品では花の色や重なりだけでなく、枝の線と余白も生かしています。公式サイトでは、用途別の商品・サービスが案内されています。

枝の線と花の間の余白を生かした髙松さんの作品。
枝の線と花の間の余白を生かした髙松さんの作品。(画像・資料提供:株式会社EMOTION RHYTHM) 出典:プレスリリース

リリースで紹介されるブランド誕生の背景には、コロナ禍で教室などの仕事を続けにくくなった卒業生たちの存在がありました。髙松さんが甥の山口さんに相談し、長く磨いた技能を販売やレンタルで生かせる場として立ち上げたといいます。デザイナーは全員、花の仕事に25年以上携わり、NFD1級と国家資格の1級フラワー装飾技能士を取得していると同社は説明しています。

作品を選びたい人は、プリザーブドフラワー、アーティフィシャルフラワー、ウェディングブーケの各ページへ。店舗やオフィスの装花を考えている人には、法人向けフラワーレンタルの案内があります。制作や注文の相談方法は、公式サイトで確認できます。

素材の表情や、作品を置く空間との関係に関心がある方には、銀閣寺の工芸展「相客香」を取材した記事も紹介しています。

本記事は取材回答と公開情報に基づいて制作しています。取材記事の編集方針

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