「タイルを切る道具はたった一つです」。池田泰佑さんの追悼展を開く高石倉庫 タイル美術館の館長・嵯峨広造さんは、作家の仕事を伝えるものとして、まずその道具を挙げました。小さな陶片も大切に保管していた姿に、作り手の思いを感じているといいます。
2026年11月7日から12月25日まで開かれる「池田泰佑 追悼展」。最後の一片を託された遺作《未完》と、家族が大切にしてきた作品を、どんなまなざしで見るとよいのでしょうか。制作にも関わった嵯峨さんに聞きました。

一つの道具と、2ミリに満たない陶片
展示する道具や陶片について尋ねると、嵯峨さんは、一つの道具で多彩な表現を生み出すことに注目してほしいと答えました。
その手段となる陶片は池田が大切に保管しておりました
2ミリに満たない陶片すらです
「そこに作家の魂が宿ってます」と続ける言葉には、素材の小ささだけでは測れない、作り手の仕事への敬意が表れています。提供された写真にも、作業台に広がる色とりどりの陶片と、タイルを切る道具が写っています。

別の作業写真では、手に持ったタイルへ道具を当てる様子が見えます。作品を構成する一片一片をつくる手元と、完成した面の表情を見比べる手掛かりになります。

《未完》では、託された場所と選んだタイルへ
主催者の発表によると、《未完》は池田さんと嵯峨さんが制作に携わり、最後に残った一片を池田さんが嵯峨さんへ託した作品です。池田さんの逝去後、アトリエに未完成のまま残されました。今回の展示では完成させず、託されたときの状態を大切にするとしています。
その作品のどこを見てほしいか、という問いに、嵯峨さんは二つの視点を挙げました。
池田泰佑がどの部位を私に託したか
そこに私がどんなタイルを選んだのか
具体的な位置や、選んだタイルの色・形までは、今回の回答では示されていません。写真だけでその一片を決めつけず、会場で作品と制作の経緯をたどるときの問いとして持っていきたい言葉です。

制作途中を写した提供写真には、作品のそばへ並べられた陶片と、手元を見つめる池田さんの姿があります。これを今回の展示会場の写真や、最後の一片を入れた瞬間として扱うことはできませんが、作品に向き合っていた時間を伝えてくれます。

「今の自分が見て感じること」を楽しんでほしい
ご家族が「渾身の一作」と語る作品では、色や質感のどこに注目すればよいのでしょうか。嵯峨さんは特定の見方を指定せず、「なんの前情報も必要ありません」と答えました。
今の自分が見て感じることを体感していただきたい
ものの見方や自分の世界観によって、作品の見え方、受け取り方は人それぞれ違う。その違いを楽しんでほしいといいます。「何度も来てタイルアートの階段を登ってほしい」という言葉も添えられていました。
主催者によると、この作品は池田さんの妻が紹介し、妹の自宅で大切にされてきた一作。完成した作品と、未完成のまま残された作品を並べ、色や質感、作家が向き合った時間に触れる展示です。

作品と一緒に、手元の仕事を知る
取材では、釉薬を調合する様子や、池田さんが作った灰皿の写真も提供されました。制作の手元と、器に表れた色合いを見ると、タイル作品だけを一枚の写真で見るときとは違う、素材の表情にも目を向けられます。

灰皿の素材説明には、釉薬名として「鹿青」と記されています。今回の写真提供は作品や制作背景を紹介するためのもので、写真に写る品すべてが会場に展示されるという案内ではありません。

高石倉庫 タイル美術館で11月7日から
高石倉庫 タイル美術館は、中村タイルが長年タイルを保管・出荷してきた倉庫を活用した展示施設です。入場は無料、予約は不要。会期中にも休館日があるため、訪問前に公式の開館日カレンダーをご確認ください。
| 項目 | 開催概要 |
|---|---|
| 展覧会 | 池田泰佑 追悼展 |
| 会期 | 2026年11月7日(土)〜 12月25日(金) |
| 会場 | 高石倉庫 タイル美術館 |
| 所在地 | 大阪府高石市綾園5-8-27 中村タイル 阪南物流センター内 |
| 入場 | 無料・予約不要 |
| 開館日・時間 | 公式カレンダーで要確認 |
公式ブログの展覧会案内には、池田さんの作品集制作を支える取り組みも紹介されています。開幕に合わせて館内で販売予定の中村ジュンコさんの作品は、追悼展でご家族から借り受ける展示作品とは別で、販売金額の一部を作品集制作費に充てる予定です。
本記事は2026年10月23日の嵯峨広造さんへの取材回答と主催者の公開情報をもとに制作しています。画像は今回の記事用に提供された作品・制作資料です。編集部が制作現場や展覧会を訪問した記録ではありません。取材記事の編集方針はこちら。










