京都・銀閣寺の書院と集芳軒を会場に、日本の美術工芸展「相客香(あいきゃくこう)」が2026年11月8日から10日まで開かれます。通常非公開の書院で富岡鉄斎の襖絵「大江捕魚図」を特別公開し、現代の作り手たちの作品とともに鑑賞できる展覧会です。主催する日本の美術工芸を世界へ実行委員会に、会場での見方を聞きました。

発表資料によると、本展は土、漆、木、金属、ガラス、天然繊維などを用いる作家の作品を紹介します。監修・キュレーターは黒澤浩美さん。展示名には、同じ席に居合わせた客と、組香で試香に出されない香を指す「客」の意味が重ねられています。

作品と向き合い、位置を変えて眺める
実行委員会は、まず作品全体の姿や形、色を見て、最初に抱いた印象やふと思い出した記憶を大切にしてほしいと話します。そのうえで、しゃがむ、横から眺める、後ろに回るなど、体勢や立つ位置を変えてみることを勧めています。

異なる位置から見ると、作品の別の表情に気づくことがあります。素材の触り心地や技法、どこから来た作品なのか、誰がどれほどの時間をかけたのかに思いを巡らせることも、鑑賞の入口になるそうです。実際の接触は求められておらず、会場の案内に従って鑑賞してください。

委員会は、隣の作品や周囲の襖絵との関係を考え、作品と向き合う中で自分自身との対話にも気づけると説明します。一緒に訪れた人がいれば、思い浮かんだことを言葉にして共有し、ゆっくり過ごしてほしいとのことです。

襖絵の人物と、信楽のかたち
「大江捕魚図」には、舟を漕いで漁に励む人々や悠々と過ごす姿が描かれ、酒を酌み交わす場面も見つかるかもしれないと委員会は紹介します。
谷穹さんの《信楽 蹲》について、委員会は本来の用途を考えるとともに、形を襖絵の人物に重ねる見方を提案します。蹲は、室町時代に人が膝を抱えてうずくまる姿から生まれた形といわれるそうです。作品を人の姿に重ねることで、襖絵の水がゆるやかに流れるように感じられるかもしれないといいます。

一つの作品だけでなく、書院のしつらえと隣り合う作品、襖絵を行き来しながら見ることが、本展の楽しみの一つです。

漆の層に重なる時間

浅野絵莉さんと関美怜さんの《Layer-Cube》シリーズは、漆を幾重にも塗り重ね、その層を彫刻して形づくられています。委員会によると、一日に一度塗られた一層は、その一日が視覚化されたものでもあります。

一千色にも及ぶ漆の層を見ることは、積み重なった時間と向き合うことでもある、と委員会は話します。小さな作品の中にある色の重なりにも目を向けてみてください。

さまざまな素材の作品が同じ席に

会場には素材も世代も異なる作品が集まります。たとえば、発表資料では截金を用いた飾り筥や、立体作品などが紹介されています。作品ごとに形や表面の違いを見比べられます。

資料には、土を用いた作品や、光を受ける表面を持つ作品も掲載されています。写真は主催者が公開したもので、実際の展示方法は会場で確認してください。

曲線や色の重なりなど、異なる造形を見比べると、それぞれの作品に目を留めるきっかけになります。

展覧会は、香を聞くときの作法を手がかりに、作品と鑑賞者の出会いを考えるもの。良し悪しを決めるよりも、記憶と照らし合わせる鑑賞の姿勢を大切にしています。

会期と来場案内
一般会期は11月8日〜10日の9時30分〜16時30分で、事前申込制。入場料は銀閣寺の拝観料を含む3,000円です。11月7日は招待者限定です。主催者の公式案内で最新情報と予約方法を確認してください。
会場保全のため靴下が必要で、足先が濡れている場合は新しい靴下への履き替えが案内されています。館内は撮影禁止。駐車場はなく、公共交通機関の利用が勧められています。
この記事は主催者への取材回答と公開資料をもとに制作しました。取材記事の編集方針










