木をふんだんに使ったギターは、どのような考え方で材料や部品を決めているのでしょうか。山形県の木工所、株式会社ウッド・マイスターが手がける「I’mK(アイムケイ)」に取材すると、約40種の木材を調べた研究開発と、負荷がかかる部分には金属を残す設計判断が見えてきました。

勧進代ブナは一例。木材選びでは約40種を試験
今回のプレスリリースでは、山形県長井市の木材を使う「No.18勧進代ブナ ヘッドレス6弦」が紹介されています。ただし、I’mKのギターボディすべてが勧進代ブナというわけではありません。同社は取材に対し、リリースを長くしすぎないようNo.18を一例として挙げたと説明しました。
研究開発の段階では、山形県産材、国産材、外国産材を合わせて約40種を対象に、樹種ごとの音響試験と、塗料の違いによる音響試験を行ったそうです。試験では音響損失(tanδ)を計測しています。
では、測定結果だけで使う木を決めるのでしょうか。同社の回答には、楽器を実際に形にするための複数の観点がありました。音響に加え、ビスで固定する際に必要な堅さ、コスト、加工性、流通性や希少性も考慮して、現在使用する木材を選んでいるとのことです。
公式FAQでも、山形県産材・国産材とエボニーなどの外国産材を組み合わせると案内しています。ブランド全体を一つの樹種や産地でくくらず、気になる一本ごとの素材を確かめたいところです。

木で作る部分と、金属を残す部分
I’mKが掲げるのは「木で再現できるパーツは、できる限り木でつくる」という考え方です。公式のブランド紹介では、ブリッジやピックアップカバー、ノブ、ヘッドレスの調弦機構の筐体などにも木材を取り入れていると説明しています。
使い心地や丈夫さをどう確かめているか尋ねると、同社は繰り返し試行錯誤して完成させていると回答。そのうえで、強度を考える際の基本的な判断を教えてくれました。
強度としては、そもそも負荷がかかる部分には金属パーツを残して、できる限り木化しています。
――株式会社ウッド・マイスターの取材回答より
木を使う範囲を広げながら、部品にかかる負荷に応じて金属も組み合わせる。木製パーツの外観だけでは分かりにくい、素材の使い分けです。

背面の調弦ノブは、実際に回して改良
ヘッドレスモデルでは、チューニング機構をボディ背面へ移しています。取材回答では、操作の方法は基本的に一般的なヘッドレスギターと同じで、チューニングノブを背面へ持ってきた構造とのこと。前面の意匠を邪魔しない点を違いとして挙げています。

試作時には実際に操作しながら、ノブの回しやすさを何度も改良したそうです。座ったときの具体的な手の伸ばし方などについては今回の回答に説明がないため、操作感を想像で補わず、試奏の際に自分で確かめたいポイントとしておきます。
同社からは今回の取材に合わせ、「試奏、調音の様子」として写真も提供されました。ギターを膝に載せて弾く姿が写っています。編集部による試奏の写真ではなく、同社が提供した制作・確認の様子です。

立体加工の技術で、木の部品を形にする
ウッド・マイスターは3D CAD/CAMと同時5軸制御NCルーターを使った木材の立体加工を得意としています。公式の製造工程紹介では、乾燥した木材を大まかな寸法に切る木取りを経て、ボディ、ネック、指板、木製パーツをNC加工する流れを紹介しています。接着・塗装・組み立ても、それぞれの部材に合わせて進めます。

今回の取材では、同社から「I’mKメイキング」動画も案内いただきました。制作の様子を知るための資料として、公式の工程紹介と合わせて見ることができます。
ラインナップには、弦の数やフレットの設計が異なるモデルもあります。リリースはファンフレットやカーブドフレットに触れていますが、すべての仕様がNo.18に備わるという意味ではありません。写真の多弦モデルとNo.18の6弦モデルも区別して見ておきたいところです。

東京楽器博で触れて確かめる機会も
同社は、2026年10月31日・11月1日の東京楽器博2026でタッチ&トライを予定しています。会場は科学技術館、I’mKのブースはH0924と案内されています。
イベント公式サイトによると、開催時間は10月31日が10:00〜18:00、11月1日が10:00〜17:00。入場料は1日あたり前売2,500円、当日3,000円(税込)で、高校生以下は無料です。別途チケットが必要なステージ企画などもあるため、来場条件は公式案内を確認してください。
リリースに掲載されたNo.18勧進代ブナ ヘッドレス6弦は、重さ3,500g、価格297,000円(税込)から、発売予定日は2026年10月31日です。販売先は公式オンラインショップ。公式FAQでは受注生産とし、納期は機種ごとに問い合わせるよう案内しています。
約40種を調べた木材選びも、木と金属の使い分けも、見た目の印象だけでは伝わりにくい部分です。試奏の機会には、木製ノブの触れ心地や背面の操作感を、こうした制作上の判断と重ねて確かめられそうです。
※本記事は株式会社ウッド・マイスターの取材回答と公開情報をもとに制作しています。写真は取材提供素材および同社プレスリリース掲載素材です。音響・操作性については同社の説明であり、編集部は試奏や性能測定を行っていません。価格・開催案内は2026年10月26日の確認時点。制作についてはMONOLABの取材記事の編集方針をご覧ください。










