タイの灼熱環境で「曲がる太陽電池」が世界初の挑戦!日本の先端技術がアジアのエネルギー革命を牽引か?
地球温暖化やエネルギー問題が深刻化する中、クリーンエネルギーへの移行は喫緊の課題となっています。太陽光発電はその筆頭ですが、従来の重くて硬いパネルでは設置場所が限られるという弱点がありました。しかし今、日本の画期的な太陽電池が、その常識を覆そうとしています。
今回、日本の技術商社であるマクニカと、タイの大手デベロッパーSENA社がタッグを組み、画期的な次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池(PSC) 」を、タイの亜熱帯環境下で実証する、世界初の試みに乗り出しました。この挑戦が、アジア、そして世界のエネルギー事情を大きく変える可能性を秘めていると、私は強く感じています。
「軽い・薄い・曲がる」次世代太陽電池、その秘めたる可能性とは?
皆さんは「ペロブスカイト太陽電池」という言葉を聞いたことがありますか?もしかしたら、まだ耳慣れない技術かもしれません。これは、ロシアの鉱物学者ペロフスキー氏にちなんで名付けられた結晶構造を持つ材料を利用した太陽電池のこと。従来のシリコン系太陽電池とは一線を画す、驚くべき特性を持っています。
PSCの革新的な特徴
- 軽い・薄い: 柔軟性があり、まるでフィルムのように薄く軽い。
- 曲がる: 従来のパネルでは難しかった曲面への設置が可能。
- デザイン性: 透けるタイプや色付きのものも開発されており、建物の意匠を損なわずに設置できる。
これらの特徴により、これまで太陽光発電の設置が不可能だったビルの壁面、窓、さらには車のボディやウェアラブルデバイスなど、あらゆる場所が発電所に変わる可能性を秘めているのです。これはまさに、太陽光発電の概念を根本から覆すブレイクスルーと言えるでしょう。
なぜタイ王国なのか?世界初の挑戦にかける思い
PSCの持つポテンシャルは計り知れませんが、実用化に向けては大きな課題があります。それは、熱や湿気、そして紫外線といった過酷な環境下での耐久性。そこで白羽の矢が立ったのが、年間を通して高温多湿な亜熱帯気候であるタイ王国での実証です。
マクニカとSENA社は、この実証事業を環境省の「二国間クレジット制度(JCM)資金支援事業」の一環として推進しています。JCMとは、日本の優れた脱炭素技術を途上国に導入し、CO2排出量削減に貢献することで、日本の削減目標にも算入できるという画期的な仕組みです。これにより、タイを起点に東南アジア全体へのPSC普及を目指すという、壮大なビジョンが描かれています。
過酷な環境での検証が、未来を拓く
タイでの実証は、単なる性能検証にとどまりません。現地の電気規格に適合するシステムの構築、さらにはPM2.5などの大気汚染下での耐久性検証、そして運用からメンテナンスまでの一貫した実施体制の確立を目指します。
2024年度は、すでにタイの電気規格調査とシステム構築の基盤整備が完了し、SENA社が所有する住宅の屋上にPSCを設置して初期評価を実施しました。そして2025年度からは、住宅の屋根や壁の全方位にPSCを約60枚設置し、本格的な実証と運用体制の確立を進めていくとのこと。IoT技術を活用して発電性能をモニタリングし、メンテナンス体制まで確立するというから、その本気度が伺えます。
▲ タイの住宅屋根に設置されたPSCイメージ。建物のデザインと調和する薄さが魅力です。
SENA社の代表であるケサラ・タニャラックパーク氏は、「高温多湿、強い紫外線、PM2.5の塵埃が特徴であるタイの亜熱帯気候下におけるペロブスカイト太陽電池の性能を研究し、実社会に適した耐久性のあるPSCシステムの開発を目指します」と、この挑戦への意気込みを語っています。
一方、マクニカの佐藤篤志氏も、「この技術は国内でも大きな注目を集めています。亜熱帯気候条件下でペロブスカイト太陽電池の実証を行うことで、タイを起点にアジアから世界への普及促進を目指します」と、日本の技術が世界に貢献する未来への期待を表明しています。
日本の技術力とタイの知見が融合する理由
今回のプロジェクトは、マクニカとSENA社、それぞれの強みが組み合わさることで、大きな相乗効果を生み出しています。
株式会社マクニカとは
マクニカは、半導体やサイバーセキュリティをコア事業としつつ、世界の最先端テクノロジーを活用して環境問題の解決に取り組む技術商社です。PSCの発明者である桐蔭横浜大学の宮坂 力特任教授の指導の下、PSCの開発・提供、実証環境のシステム構築、技術的指導、そして性能モニタリング・データ解析といった、技術的な中核を担っています。
その環境ソリューション事業では、「エネルギーマネジメント」をはじめとする4つの事業を展開し、持続可能な社会の実現に貢献しています。 マクニカの環境ソリューション事業について詳しくはこちら
SENA Development Public Company Limitedとは
SENA社は、タイ王国で初めて全戸に太陽光発電パネルを設置した不動産ブランドとして知られる、タイの大手デベロッパーです。子会社であるSENA Green Energy Company Limitedを通じて、タイ王国内のPSC実証環境の提供、設置工事、そして現地での性能モニタリングを担当します。彼らは「SENA Green Affordable Living」というコンセプトの下、クリーンエネルギー住宅の普及に力を入れており、この実証事業を通じて、タイの人々が手頃な価格でクリーンエネルギーを利用できる社会を目指しています。
両社がそれぞれの専門性と強みを持ち寄ることで、PSCの実用化に向けた検証が、より現実的で包括的なものとなるでしょう。
私たちが期待する、その先の未来
このタイでのペロブスカイト太陽電池の実証事業は、単なる技術的な検証に留まりません。成功すれば、東南アジアの脱炭素化を加速させ、クリーンエネルギーの利用を劇的に拡大させる可能性を秘めています。
「軽い・薄い・曲がる」太陽電池が普及すれば、これまで考えられなかった場所での発電が可能になり、私たちの生活空間や都市の景観も大きく変わっていくかもしれません。エネルギーの未来を担うこの画期的な技術が、タイの亜熱帯環境でどのように花開くのか、目が離せませんね。
皆さんも、この「曲がる太陽電池」が描く、新しいエネルギーの未来にぜひ注目してみてください。 マクニカについて SENA Development Public Company Limitedについて











