驚愕のミラノサローネ出展!「物質調律家」山崎タクマが挑む、モノと生命の境界線
2026年4月、世界中のデザインの最先端が集まるイタリア・ミラノが、ある日本人デザイナーの挑戦に沸き立つでしょう。35歳以下の若手デザイナーの登竜門「SaloneSatellite」に選出されたのは、異色の肩書きを持つ「物質調律家」、山崎タクマ氏。彼が発表するのは、私たち人間が持つ「生命」と「モノ」に対する認識を根底から揺さぶる、衝撃的なプロジェクト「Bio-Vide : Becoming Object」です。
私がこの情報を目にした時、まず心を奪われたのは「物質調律家」という言葉でした。一体どんな人物が、どんな想いでこの領域に足を踏み入れたのでしょうか?彼の哲学と、世界へと発信する新たな作品について、深く掘り下げていきます。
「モノと生命の境界」を問う、10年間の探求
山崎氏のプロジェクト「Bio-Vide(バイオ・バイド)」は、実に2014年から続く、10年越しの壮大な探求です。彼は、生物学的な定義ではなく、 「有生性(アニマシー)」 という、私たちが「生き物らしさ」を感じる心の働きに注目します。
考えてみてください。なぜ私たちは、蚊は躊躇なく殺せるのに、犬には抵抗を感じるのでしょうか?同じ生き物でありながら、そこに差が生まれるのはなぜなのか。あるいは、日常的に使うメガネと、亡くなった祖父の形見のメガネでは、なぜ扱い方が全く異なるのでしょう?どちらも「モノ」であるはずなのに、私たちの心の中では特別な存在感を放ちます。
山崎氏が取り組むのは、まさにこの曖昧で揺らぎのある境界線。彼は、ただ考えるだけでなく、実際に素材開発や作品制作を通じて、その問いに挑んできました。
- 牛骨のハンガーに牛革をかけるインスタレーション
- 魚皮を自ら鞣(なめ)すという、生命と物質の変換作業
- そして、落ち葉を構造体として再構成する独自の板材開発で、特許まで取得
これらの実践は、生き物の死骸や自然素材の個体差、集合性といった要素から、私たちが無意識に感じ取る「生命性」と「物質性」の間の知覚の揺らぎを、自身の感覚の中に蓄積するプロセスだったのです。
この深遠な探求の背景には、獣医師だったお父様の影響があると言います。幼少期から、口にする肉が「生命から食べ物へ変換された結果である」という事実を肌で感じてきた経験が、山崎氏の原点になっているのです。命の循環、そしてその先の物質への変容を見つめる視点は、まさに「物質調律家」の真骨頂と言えるでしょう。
自身を「モノ」として展示する衝撃作「Becoming Object」
そして今回、ミラノで発表される新作が、この探求をさらに深く、そして衝撃的な方向へと導きます。その名も「Bio-Vide : Becoming Object(バイオ・バイド:ビカミング・オブジェクト)」。
山崎氏はこの作品で、これまでの「生命側」からモノを語る視点を反転させ、なんと作家自身が「モノの側」に立つという試みを行います。

彼自身が開発した落ち葉の板材で制作された、高さ約1.7mの双子の椅子。その一脚に、山崎氏は自らが落ち葉で構成された仮面を装着し、静かな「モノ」として空間に配置されるのです。「物の側の感覚を知りたかった」という彼の言葉は、その挑戦の深さを物語っています。
そして、もう一脚の椅子には、生成AIを活用した作品「PromPlant / HeartBeat」が展示されます。これは、山崎氏自身の心拍データをもとに生成された植物像。自身の「身体」、そこから得られる「データ」、そして「物質」である椅子や落ち葉の仮面が鮮やかに対比され、生命とモノ、そしてテクノロジーの関係性を多角的に問いかけます。
この作品は、観る者に強烈な印象を与えるだけでなく、山崎氏自身の今後の制作活動にも、新たな発想と表現をもたらすことでしょう。
世界が注目する展示の詳細
この前衛的な作品を、ぜひあなたの目で確かめてみてください。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 会期 | 2026年4月21日(火)~4月26日(日) |
| 会場 | Fiera Milano, Rho (イタリア・ミラノ) |
| 出展部門 | SaloneSatellite (35歳以下の若手デザイナー対象部門) |
| ブース | Pavilion 7 / Booth E35 |

「Industrial Artistry」を提唱する、物質調律家の軌跡
山崎タクマ氏のプロフィールを見ると、その多彩な才能と確かな実力に驚かされます。1990年北海道生まれの彼は、多摩美術大学プロダクトデザイン専攻を次席で卒業後、キヤノン株式会社で一眼レフカメラやレンズのデザインを担当しました。精密機器の最前線で培われた技術力と美意識は、彼の作品にも脈々と息づいています。
在職中から自身の哲学に基づく作品制作を開始し、Lexus Design Award、KOKUYO Design Awardなど、国内外で数々のデザインアワードを受賞。2021年に独立後は、2社を経営しながら、塗装や表面処理の微差まで管理する「インダストリアルデザイン」と、思想や哲学を物語として提示する「芸術」という、異なる領域を横断する活動を展開。この実践の中から、彼独自の概念 「Industrial Artistry(インダストリアル・アーティスリー)」 を提唱しています。
2025年にはニューヨークのギャラリーと契約し、マンハッタンで個展を開催。作品がプライベートコレクションに収蔵されるなど、その活動は既に国際的な評価を得ています。さらに近年は、宇宙船設計やスペースコロニー構想といった地球外環境における人間と物質の関係性にもテーマを広げ、ロボットデザインを中心に、映像、音楽、ファッション、絵本制作と、その活動領域はとどまるところを知りません。
主な経歴と受賞歴(一部抜粋)
- 2015年: 多摩美術大学プロダクトデザイン専攻卒業
- 2016年: 卒業制作「Bio-Vide」がミラノで招待展示、Lexus Design Award 2016 受賞、materialPREIS 2016 グランプリ(ドイツ)
- 2018年: KOKUYO Design Award 2018 グランプリ/オーディエンス賞
- 2019年: TAKUMA YAMAZAKI DESIGN 合同会社 設立
- 2020年: iF Design Award 2020 受賞(ドイツ)
- 2023年: CES Innovation Awards 2023 受賞(米国)
- 2025年: ニューヨークにて個展「Industrial Artistry」開催
プロジェクトを支える匠の技:技術協力企業
山崎氏の独創的なビジョンを実現するには、確かな技術力が不可欠です。今回のミラノ出展には、二つの強力な企業が技術協力として参加しています。
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【ふつか印刷】 シルクスクリーン印刷技術を核に、手仕事による高品質な仕上がりを追求する印刷会社。素材やデザインに応じた柔軟な発想で、印刷の可能性を広げています。山崎氏の作品における繊細な表現や素材感の追求に、彼らの技術が貢献していることは想像に難くありません。
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【SPACEAGENT株式会社】 航空宇宙部品の加工マネジメントを手掛ける企業。樹脂・金属問わず多様な加工技術を宇宙開発に応用し、超難加工にも挑戦する彼らの技術は、探査ロボットやロケットなど、未来の宇宙産業を支えています。今回の作品で、生成AIやデータといった最先端の要素を取り入れる中で、彼らの技術力が山崎氏の表現を物理的に具現化する上で、重要な役割を果たしたことでしょう。
あなたも「モノ」の視点から世界を見てみませんか?
山崎タクマ氏がミラノサローネで発表する「Bio-Vide : Becoming Object」は、単なるデザイン作品ではありません。それは、私たちが普段意識することのない「モノ」たちの視点から、世界を再認識する機会を与えてくれます。
彼が「モノの側の感覚を知りたかった」と語るように、この展示を通じて得られる経験は、あなたの日常に対する見方をも変えるかもしれません。生命と物質の境界で揺れ動く知覚。その問いかけは、デザインの領域を超え、哲学的な思索へと私たちを誘います。
もし、この刺激的なコンセプトに心惹かれたなら、ぜひ山崎タクマ氏の公式サイトを訪れてみてください。彼のこれまでの作品や活動に触れることで、さらに深い洞察が得られることでしょう。











