[画像・上:タイの住宅屋根に設置されたPSCイメージ(提供:マクニカ/SENA社)]
ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、ロシアの鉱物学者ペロフスキー氏にちなんだ結晶構造を持つ材料を利用した次世代太陽電池である。従来のシリコン系太陽電池とは異なり、「軽い・薄い・曲がる」という特徴を持つ。柔軟性がありフィルムのように薄く軽いため、従来のパネルでは難しかった曲面への設置が可能である。また、透けるタイプや色付きのものも開発されており、建物の意匠を損なわずに設置できる。これらの特徴により、ビルの壁面、窓、車両ボディ、ウェアラブルデバイスなど、これまで太陽光発電の設置が困難であった多様な場所が発電所に変わる可能性を秘めている。
PSCの実用化には、熱、湿気、紫外線、PM2.5といった過酷な環境下での耐久性検証が課題であった。タイは年間を通して高温多湿な亜熱帯気候であり、PM2.5による大気汚染も特徴であるため、実証地として選定された。本実証は、日本の優れた脱炭素技術を途上国に導入し、CO2排出量削減に貢献する環境省のJCM資金支援事業の一環として推進されている。
2024年度は、タイの電気規格調査とシステム構築の基盤整備が完了し、SENA社が所有する住宅の屋上にPSCを設置して初期評価を実施した。2025年度からは、住宅の屋根や壁の全方位にPSCを約60枚設置し、本格的な実証と運用体制の確立を進める計画である。IoT技術を活用した発電性能のモニタリングと、メンテナンス体制の確立も目指す。SENA社のケサラ・タニャラックパーク代表は、タイの亜熱帯気候下におけるPSCの性能研究と、実社会に適した耐久性のあるPSCシステムの開発を目指す方針を示した。マクニカの佐藤篤志氏も、タイを起点にアジアから世界へのPSC普及促進を目指す考えを表明している。
本プロジェクトにおいて、マクニカはPSCの開発・提供、実証環境のシステム構築、技術的指導、性能モニタリング・データ解析といった技術的な中核を担う。同社は半導体やサイバーセキュリティをコア事業としつつ、世界の最先端テクノロジーを活用して環境問題の解決に取り組む技術商社である。一方、SENA社はタイ王国内のPSC実証環境の提供、設置工事、現地での性能モニタリングを担当する。同社はタイで初めて全戸に太陽光発電パネルを設置した実績を持つ大手デベロッパーである。両社の専門性と強みが組み合わさることで、PSCの実用化に向けた検証が包括的に進められる。
このタイでのPSC実証事業の成功は、東南アジアの脱炭素化を加速させ、クリーンエネルギーの利用を拡大させる可能性を秘めている。「軽い・薄い・曲がる」PSCの普及により、これまで太陽光発電が不可能であった場所での発電が可能となり、生活空間や都市の景観にも変化をもたらす可能性がある。
マクニカの環境ソリューション事業: http://www.macnica.co.jp/business/energy/ 株式会社マクニカ: http://www.macnica.co.jp SENA Development Public Company Limited: https://www.atpress.ne.jp/news/558810











