もしあなたが函館の未来を想像するとしたら、どんな景色が目に浮かびますか?
人口減少という大きな課題を抱える地方都市が、ITの力でどのように生まれ変われるのか。その答えを探る興味深い取り組みが、今、函館で始まっています。
デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社(DIT)は、同社が主催する社内新規事業提案イベント「未来のDITチャレンジ」で、「函館市を人口減少から救え」というテーマを掲げました。このイベントで選ばれた二つの革新的なアイデアが、先日、函館市の大泉市長に直接報告され、地域の未来に向けた大きな一歩を踏み出したのです。
DITが挑む「未来のDITチャレンジ」とは?
DITの「未来のDITチャレンジ」は、従業員一人ひとりの発想力を地域や社会の課題解決に生かすことを目的としたユニークな新規事業提案イベントです。毎年テーマを変えながら、社員が持つ多様な知見や経験を活かし、ITの力で社会に貢献できる新しいビジネスモデルを創出しています。
今年のテーマは、まさに喫緊の課題である「函館市を人口減少から救え」。この挑戦に対し、応募総数13件の中から、最優秀賞と審査員特別賞の2つのアイデアが選ばれました。
函館市長も期待!未来への提言
先日、受賞チームは函館市の大泉市長をはじめとする関係各位を訪問し、提案内容や今後の展望について熱い報告を行いました。市長も深く関心を示し、実現への期待を寄せたといいます。
函館市の大泉市長(右から3人目)と受賞者との記念撮影
最優秀賞:空から拓く函館の未来!「ドローンサブスク事業 Sky Hakodate」
私が特に注目したのは、最優秀賞を受賞した関口法立氏の「【函館市のドローンサブスク事業 Sky Hakodate】空から繋ぐ、街の未来」です。
この事業の根底には、関口氏が生まれ育った道南地域への「恩返し」という熱い想いがあります。前職で函館税関に勤務していた経験から、ドローンの飛行計画策定が非常に専門的で煩雑であることに気づき、ここにITの力で貢献できる大きな可能性を感じたそうです。
ドローン活用のハードルを下げる革新的なサブスクモデル
関口氏が提案するのは、函館市でドローンサブスクモデルを展開するというもの。具体的には、ドローンのレンタルから、複雑な操作訓練、さらにはドローン情報基盤システム(DIPS)への申請代行までを一貫して提供します。
大泉市長へ提案内容を報告する様子
DIPSとは、国土交通省が運営するドローンなどの飛行許可・承認申請システムのこと。航空法や市条例、過去の申請データなどを重ね合わせる必要があるため、計画の策定は非常に手間がかかります。
DITの強みであるIT技術と、関口氏の法律・行政分野の知見を融合させることで、この行政手続きを大幅に効率化し、申請データを自動生成する仕組みを構築できると確信しています。これはまさに、ドローン導入を考えている企業や個人にとって、画期的なサービスになるでしょう。
函館に新たな産業と雇用を創出する
この事業の真髄は、単なるドローンの利便性向上だけにとどまりません。
- ドローン関連企業の誘致: ドローンの運用をサポートするインフラを整えることで、関連企業が函館に進出しやすくなります。
- 雇用創出と人口流出の防止: 誘致された企業やサブスク事業自体が、専門的でやりがいのある仕事を生み出し、地元出身者の積極採用や移住者の増加に繋がります。
これにより、地域課題の解決と人口減少の抑制を同時に目指すという、壮大なビジョンが描かれています。官民連携を通じて、函館の空から新たな産業が生まれる日もそう遠くないかもしれません。
左:ドローンサブスク事業の概要、右:ドローンビジネス市場の成長可能性を示した図
※画像中の用語補足: ・TAM (Total Addressable Market) :ある事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模 ・SAM (Serviceable Available Market) :ある事業が獲得しうる最大の市場規模 ・SOM (Serviceable Obtainable Market) :ある事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模
審査員特別賞:バーチャルが創る新しい移住の形「函館移住体験×IT」
次に、審査員特別賞を受賞した今村真紀氏・川崎敬介氏・本山泰祐氏・関島愛織氏のチームによる「【函館移住体験×IT】イカした未来の街づくり」をご紹介します。
このチームのメンバーは全員、移住やワーケーションの経験がなかったといいます。だからこそ「観光視点」ではなく「住む視点」で函館の魅力を深く掘り下げることができた、と彼らは語ります。これは、まさにユーザー目線に立ったアイデアを生み出す秘訣だと感じました。
「バーチャル移住体験」で、理想の暮らしを“自分ごと”に
彼らが提案するのは、 「バーチャル移住体験」 という画期的なサービスです。フルリモートワーカーや子育て世代など、移住を検討している人々が、実際に足を運ぶ前にバーチャル空間で函館での暮らしを体験できるというもの。
これは、トヨタ自動車が手掛ける未来都市の実証実験「ウーブン・シティ」に着想を得たといいます。バーチャル空間で地域の仕事や暮らしに触れることで、移住への心理的なハードルを下げ、 「ここで暮らしたい」という意欲を刺激します。
左:4ステップの好循環サイクル、右:バーチャル空間でイカ漁体験ゲームのイメージ
例えば、バーチャル空間でイカ漁を体験したり、函館が誇る「ワインの街」の魅力に触れたり。地域のリアルな声や、移住者の体験談なども盛り込みながら、「理想の函館」をバーチャル上に再現します。これはまるで、未来都市の設計図を紐解くようなワクワク感がありますね。
あなたなら、バーチャル函館でどんな体験をしてみたいですか?
「移住→定住→企業誘致」の好循環で函館をリモートワークの聖地へ
このバーチャル体験は、単なるエンターテイメントではありません。体験を通じて地域に興味を持った人々が実際に移住・定住し、地域企業とのマッチングやIT人材の育成を促進します。
最終的には、函館をリモートワークの集積地として確立し、 「移住→定住→企業誘致」という持続可能な好循環を生み出すことを目指しています。
函館市とDITの未来へ:事業化と地域貢献
これらのアイデアは、単なる机上の空論で終わりません。最優秀賞を受賞したドローンサブスク事業は、函館市の協力・支援のもと、DITが事業化を推進しています。大泉市長からも「大変期待している」との言葉が寄せられたそうです。
DITは、自治体や地域企業との連携を深めながらサービスの実現を進め、2年後の本格運用開始を目指しています。人口減少対策や地域活性化といった函館市の課題解決に貢献し、道南地域の持続的な発展に寄与していくというDITの強い意志が感じられますね。
デジタル・インフォメーション・テクノロジー株式会社(DIT)とは
今回の取り組みを主導するDITは、東京都中央区に本社を置くソフトウェア開発事業を手がける企業です。東証プライムに上場しており、業務システム開発を中心に高い技術力と実績を持っています。函館市内にも拠点を構え、地域に根差した活動も積極的に行っていることが、今回の社内コンテストのテーマ設定にも繋がっているのでしょう。
函館の「イカした未来」に期待!
ドローンが切り開く空のビジネスと、バーチャル空間が創出する新たな移住体験。DITが生み出した二つのアイデアは、どちらもITの力を最大限に活用し、函館の人口減少という大きな課題に真っ向から挑んでいます。
これは函館だけでなく、日本の多くの地方都市が抱える課題に対する、希望の光となるかもしれません。ITと地域が手を取り合うことで、どんな「イカした未来」が創造されるのか、今後の展開から目が離せませんね。

