世界一周から帰ってきたあと、普段の毎日はどう変わるのでしょうか。352日間で36カ国を巡った映像クリエイター・小竹 広さんに聞くと、返ってきたのは、つらい出来事の受け止め方についての言葉でした。
小竹さんが旅の映像をまとめたドキュメンタリー映画『Roamin_city -旅の思い出が教えてくれる-』の上映会と写真展が、2026年11月21日(土)・22日(日)、東京・日暮里の「元映画館」で開かれます。旅が日常に残したものと、旅先で人にカメラを向ける前に大切にしていることを取材しました。

自由な旅にも、最悪な日と最高な日があった
取材で小竹さんは、インドや南米を旅するなかで、だまされたり、ひどい仕打ちを受けたりしたこともあったと振り返ります。それでも、そんなときには誰かが手を差し伸べてくれたそうです。
「自分の好きなことをして過ごす、ある意味で最も自由で、独りよがりな旅の時間でさえ、最悪だと思う日もあれば、最高だと思う日もある」
好きな場所へ行ける旅であっても、いいことばかりではない。その実感が、帰国後の暮らしにもつながりました。日本でつらいことや苦しいことが起きるのも、ごく自然なことなのだと思えるようになったといいます。
そして、旅のあとに残った変化を、こう話してくれました。
「たとえ苦しい状況に直面しても、その先に待っている良い出来事を楽しみにできるようになりました」
旅先の出来事そのものだけでなく、帰ってからの日常をどう過ごすかにまで続く話です。世界一周を予定していない人にも、自分の毎日と重ねて受け取れる部分がありそうです。
撮影の前に、挨拶と何気ない会話を
カメラを向ける前に何を大切にしたのか。小竹さんが挙げたのは、マサイ族の村でホームステイしたときの経験でした。村の長から生き方や価値観について話を聞き、そこに暮らす人々への見方が大きく変わったといいます。

その経験があったからこそ、一緒に過ごす時間をより深く感じ、素敵な瞬間をカメラに収められたのだと思う、と小竹さん。
それ以来、いきなりカメラを向けたり、撮影の交渉を始めたりするのではなく、まず挨拶や何気ない会話を交わすことを大切にしているそうです。相手の人柄や、その場の空気を感じ取ってから撮る。その順番にも、旅を通して変わった視点が表れています。
作品の発表では、ブラジル・アマゾンの先住民の家庭や、アフリカのマサイ族の人々と暮らした経験が紹介されています。土地の景色に加え、そこで過ごす人の時間も記録した旅でした。

写真でたどる、旅先の暮らしと景色
今回の取材に合わせて、小竹さんから5点の写真が届きました。モロッコの染色槽の間を歩く猫、ナミビアの子どもたち、インドの川辺、スリランカで休む犬、グアテマラの火山。リリース掲載写真とは別のカットからも、旅の幅が伝わってきます。
モロッコとナミビアで捉えた一瞬
「タンネリの猫/モロッコ」には、色の異なる槽の間を歩く一匹の猫が写っています。風景全体の色や形を眺めたあと、小さな動物の姿に気づく一枚です。

ナミビアで撮影した写真の作品名は「決められた少女」。二人の子どもの表情と視線が、近い距離で収められています。

インドの川辺、スリランカの眺め
「ガンジス川にて/インド」は、水辺に座る人と、その先を進む舟を収めた写真。広い川の手前に、近い距離で向き合う二人の姿があります。

「シギリアロックで休む犬/スリランカ」では、遠くまで続く緑の景色と、手前で横になる犬が一つの画面に収まっています。名所の眺めのなかにも、そこにいる生き物の時間が流れています。

フエゴ火山の煙と赤い光
「フエゴ火山/グアテマラ」は、山頂付近に立ち上る煙と赤い光を捉えた一枚です。人々の暮らしに寄った写真とは異なる、自然の大きな動きも記録されています。

リリース掲載写真にも、旅のさまざまな表情
ブラジルのレンソイスでは、砂丘の曲線と水面が広がっています。人物を近くに捉えた写真から視線を移すと、風景の広がりも感じられます。

ボリビアのウユニ塩湖では、広い空と地面のなかに立つ人の姿が写っています。画面に占める人物の小ささから、周囲の空間の大きさが伝わります。

ブータンの写真に登場するのは、修行僧たち。小竹さんの旅の記録には、名所の景観に加えて、その土地で暮らす人々の姿があります。

ラオスでは、自転車に乗る人と牛のいる道を撮影。こうした日常の一瞬も、旅の写真に残されています。

約4TBの記録から、約90分の映画へ
小竹さんは約11年間の公務員生活を経て、29歳で退職し、映像制作へ転身。制作現場での経験やメルボルンへの留学を経て、2024年12月24日に世界一周へ出発しました。

発表によると、旅の映像は約4TBに及び、それを約90分のドキュメンタリーへ編集したといいます。どの一場面を残したのかという質問については、作品の内容に深く関わるため、今回は回答を控えるとのことでした。その場面との出会いは、上映での楽しみにしたいと思います。
作品の案内はRoamin_city公式サイトと、取材時に提供された告知動画でも見ることができます。
日暮里での上映会と写真展。オンライン鑑賞も
上映会は各日4回、約90分。会場では写真展も同時開催されます。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開催日 | 2026年11月21日(土)・22日(日) |
| 上映開始 | 各日12:00/14:00/16:00/18:00 |
| 会場 | 元映画館 |
| 住所 | 東京都荒川区東日暮里3-31-18 旭ビル2F |
| 料金 | 2,000円 |
| 予約・受付 | 事前予約制。各上映開始時刻の15分前までに集合 |
来場が難しい場合は、オンライン上映も選べます。料金は2,000円、視聴期間は2026年11月23日(月・祝)から12月31日(木)まで。YouTubeの限定公開を利用する案内です。会場・オンラインともに、購入方法や空き状況はCAMPFIREのプロジェクトページで確認できます。
上映や写真展に向けたクラウドファンディングの募集期限は11月15日(日)23:59。映画を観る、写真を眺める、旅のあとに変わった日常の話に耳を傾ける。自分が気になる入口から、この352日間の記録に触れられます。
※開催情報は2026年10月22日確認時点。取材・写真提供:小竹 広(KOTAKE HIROMU)。本文の旅の経験と撮影姿勢は本人の回答に基づきます。写真は旅の記録であり、映画本編での採用場面を示すものではありません。










