数学を学び直したいと思っても、公式を覚え直すところから始めるのは少し気が重い。「式霊の書(しきれいのしょ)」は、そんな人が数式に触れる入口になりそうなスマートフォン向けパズルです。式を読んで装置を動かし、結果を見て置き直す。高校数学の51単元を、153面の遊びにしています。
ただ、数式に絵を添えればゲームになるわけではありません。開発元の合同会社SNAPLACEに取材すると、根号の単元を作り直した話や、正解画面の説明を見直した理由が聞けました。大人が久しぶりに数学へ戻るなら、どこから始めるとよいのでしょうか。

最初は「掛けて0になる」を思い出すところから
SNAPLACEが学び直しの入口としてすすめるのは、「観測の旅」の1単元目「式の展開と因数分解」。最初の面は「零点の転送門」です。
曲線 y = (x − 1)(x − 5) が地面と交わる点に門を置き、光を灯台へ届けます。手掛かりは、二つの数を掛けて0になるなら、少なくとも片方が0になるという性質。(x − 1)(x − 5) = 0 なら、x = 1 または x = 5。計算の結果が、そのまま門の置き場所につながります。
「これさえ思い出せば、門を置く場所は自分で決められます。高校数学から離れていた方でも、ここは中学校の範囲の延長で入れます」(SNAPLACE)
同じ単元には導入・応用・挑戦の3面があり、場面を変えて確かめる構成だといいます。さらに進む際は、平方完成で放物線の頂点を読むことや、√8 = 2√2 のような根号の整理を思い出せると取り組みやすいそうです。
公式を全部覚え直してから始める必要はない、というのも同社の説明です。公式サイトには、盤面で開ける「考え方」、操作を一手ずつ追える「お手本」、案内役の式霊に相談できる機能が紹介されています。まず自分で動かし、分からなくなったところで見方を確かめる入口が用意されています。
根号は、光を飛ばすより「棒の長さ」で伝える
今回の取材で印象的だったのは、SNAPLACEが最も作り直したという「実数・根号と有理化」の話です。
同社によると、もともとは「たすきがけ」「平方完成」といった手法をカードで選び、空いた数を自分で埋めるゲームでした。そこから、二次関数だけの3面を試作。零点や頂点に門を置いて光を運ぶ仕組みにすると、障壁の位置によって使える点が変わり、式をどう変形するかも自分で判断する遊びになったといいます。
ところが、その見せ方を根号に持ち込むと、うまくいきませんでした。初期の版では、根号の3面すべてに橋をつなぐ表現を使い、光の軌跡も表示していたそうです。しかし、√2の棒をつなぐ操作と光の軌跡に関係がなく、絵が式の意味を説明していなかった。そこで、3面をそれぞれ異なる作業として描き直しました。
| 面 | どんな操作で、何を確かめるか |
|---|---|
| 導入「根号の橋」 | 青い棒1本を√2、金の棒1本を√8として、本数を調整し、見本の6√2に長さを合わせる。√8が√2の2本分であることを長さで示す。 |
| 応用「有理化の橋」 | √2の棒をつなぎ、等分した1区間を1/√2に合わせる。1/√2を√2/2に直す計算を、「√2の半分」という操作に結び付ける。 |
| 挑戦「共役の橋」 | A√3+B√2を組み、√3−√2を掛け戻す。有理数の部分が1、√6の係数が0になる組み合わせを探す。 |
これは取材でSNAPLACEが説明した各面の設計です。式の変形をきれいな演出で飾るだけでなく、操作そのものが数式の意味を示すように変えた点に、作り手の試行錯誤があります。
この見直しに伴い、根号を含む16単元では関係のない軌跡表示を外し、棒や式への代入、計算過程の表示へ切り替えたといいます。座標や積分など、図が意味を持つ単元では軸を残し、読み方を添えたそうです。
正解したのに、頂点がどこか分からない?
もう一つ、試遊を通じて説明の考え方が変わった場面がありました。式変形を扱う別モード「宇宙の書」で、y = 2x² − 8x + 5 の頂点を求める問題です。
平方完成して 2(x − 2)² − 3 に直すとクリアになり、星がつく。それでも、クリア画面を見たときに「なぜ正解なのか」「結局、頂点はどこなのか」が分からなかったといいます。
「原因は、クリア画面が『答えの式』だけを見せて、問いに戻っていなかったことでした。平方完成はあくまで手段で、知りたかったのは頂点です」(SNAPLACE)
この式なら、頂点は (2, −3)。変形を終えたところで止めず、元の問いと結び付けて伝える必要があったわけです。同社はこうした気づきを受け、説明を徐々に追加したと回答しています。
App Storeの更新履歴にも、クリア画面に「目標 達成」と「つまり」を加え、答えの式から何が読み取れるかを言葉で結ぶ変更が記載されています。取材では、その変更につながった具体的なつまずきまで聞くことができました。
無料の12面と12問で、二つの遊び方を試せる
料金と収録範囲は、公式案内で次のように示されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応機種 | iOS/iPadOS/Android |
| 「観測の旅」 | 高校数学の51単元・153面。最初の4単元・12面は無料 |
| 「宇宙の書」 | 式変形を扱う11層・60問。第一〜三層の12問は無料 |
| 全編の解放 | 500円の買い切り。残り141面と48問を解放 |
| 無料範囲の機能 | お手本・相談・図鑑・好感度も利用可能 |
| その他 | 広告・サブスクリプション・ガチャ・スタミナなし |
図や装置と数式のつながりを確かめたいなら「観測の旅」。自分で数を計算し、式変形を練習したいなら「宇宙の書」。SNAPLACEは後者について、第一層のたすきがけ・有理化・係数比較から入る方法もすすめています。
なお、公式サイトは各単元の代表的な題材を収録したもので、すべての入試の出題形式を網羅する問題集ではないと説明しています。本記事は公開情報と開発元への取材に基づく紹介で、編集部によるアプリの試用レビューではありません。
公式をどれだけ覚えているか試す前に、「この式は、どこに門を置くことを意味するのだろう」と考えてみる。そんな入り方をしてみたい人は、まず無料範囲で、自分に合う遊び方か確かめられます。
※価格・配信情報は2026年10月21日の確認時点。取材協力:合同会社SNAPLACE。プレスリリース










